2012
07.21

「楽聖少女」の感想

Category: 過去記事
楽聖少女 (電撃文庫)
楽聖少女 (電撃文庫)
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杉井 光
アスキー・メディアワークス (2012-05-10)
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あらすじ
高校二年の夏休み、僕は悪魔メフィストフェレスと名乗る奇妙な女によって、見知らぬ世界へ連れ去られてしまう。そこは二百年前の楽都ウィーン……のはずが、電話も戦車も飛行船も魔物も飛び交う異世界!?「あなた様には、ゲーテ様の新しい身体になっていただきます」。女悪魔の手によって、大作家ゲーテになりかわり、執筆をさせられることになってしまった僕は、現代日本に戻る方法を探しているうちに、一人の少女と出逢う。稀代の天才音楽家である彼女の驚くべき名は――


主人公ユキは「さよならピアノソナタ」の主人公の息子。少し気弱で音楽好きな男子高校生。ヒロインのルゥは「神様のメモ帳」のアリスそっくり。作中では筆者の得意分野のクラシック音楽を扱っている。「神様のメモ帳」と「さよならピアノソナタ」の魅力をそれぞれ引き継いだまさに杉井光先生らしい作品だった。

音楽のすばらしさを伝える文章力は健在だった。具体的に曲のメロディを知らなくても、気分が高揚したのは気のせいではないだろう。そして主人公の高校生らしい心の葛藤を描き出す技術もさらに磨きがかかっている気がした。素直に自分と向き合えず、肝心なところでなかなか一歩踏み出せないでいる姿は少しもどかしくも共感できる。

新しい要素として、ファンタジーを取り入れていたが新鮮だった。ファンタジーには話の流れを勢いでもってしまうデミリットがあると思っているが、作中の細かい設定には矛盾はなく、整合性のとれているいいシナリオだった。また、舞台は19世紀のウィーンと自分にはなじみのない場所だったが、有名音楽家の話や当時の社会情勢を絡めていて、置いていかれる感じは全然なかった。現代では映画「アマデウス」によって偏った認識をされているサリエルが、実は音楽界を背負っている責任を強く受け止めている、正義感の強い人物という設定はよかった。

最後まで読んだときは満足感に満ち溢れていた。しかし色々伏線は残っているし、続編はおそらく出るだろう。というか出てほしい。ナポレオンと悪魔の関係や最後に当然でた魔術師の力の正体など、気になる部分はまだ沢山ある。

杉井光先生のファンである自分にとって、色々な意味で楽しめた作品だった。近日中に「生徒会探偵キリカ」も読んでみる予定。

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